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コラム:トランプ円高は妄想、側近論文にヒント

村田雅志 ブラウン・ブラザーズ・ハリマン 通貨ストラテジスト

東京 16日]
日本ではあまり知られていないようだが、トランプ米政権下で新設された国家通商会議(NTC)のナバロ委員長と、商務長官に指名されているロス氏は昨年9月、大統領選挙中のトランプ陣営のシニアアドバイザーの立場で「トランプ経済プランの達成(Scoring the Trump Economic Plan)」と題した小論文を公表している。

小論文では冒頭で、トランプ氏の経済プランは、減税、規制緩和、エネルギーコストの低下、そして慢性的な貿易赤字の削減であると明記。その目標は、米国の国内総生産(GDP)成長率を大幅に高め、数百万の新たな雇用と数兆ドル規模での所得と税収を生み出すことにあるとしている。

すでにトランプ大統領はいくつかの経済政策を明らかにしているが、その多くは小論文に沿った内容となっている。同氏は、貿易赤字の削減に通ずると思われる通商政策において、環太平洋連携協定(TPP)からの正式離脱に関する大統領令に署名。メキシコとの関係がきわめて不公平だったとの認識を示し、同国との関係見直しを中心とした北米自由貿易協定(NAFTA)の再交渉に強い意欲を示している。

為替についてトランプ大統領は、他国が資金供給と通貨切り下げで有利な立場をとっており、中国や日本が何年も通貨安誘導を続けていると批判。ナバロ委員長は、ユーロが過小評価されており、ドイツがユーロを利用することで米国や欧州連合(EU)の貿易相手国よりも有利な立場を得ているとの見解を示した。

こうした発言を受け、トランプ政権はドル安を指向していると指摘する声も出ている。また、一部市場関係者からは、トランプ政権は円安に対する不満を「いずれ」強めると推定し、ドル円が円高方向に向かうとの予想も示されている。この種の見方は、トランプ大統領の保護主義的な言動と一致しているようにも思われ、もっともらしく聞こえるが、真相は果たしてどうなのだろうか。

<側近論文で円安是正の必要性に言及なし>

まず注意しなければならないのは、トランプ大統領が目指しているのは(米成長率の加速のための)米貿易赤字の削減であって、円安の是正ではないということだ。現に上述したナバロ委員長らによる小論文では円安是正について全く議論していない。

小論文では米国が慢性的な貿易赤字に陥った主因として、1)通貨操作、2)主要貿易相手国による重商主義的な貿易慣行、3)米国にとって不十分な交渉に基づく貿易取引、の3つを指摘している。

通貨操作に関する部分では、中国が人民元を変動相場制にせず、管理相場制を維持していることを指摘。また、欧州通貨統合にも触れ、ユーロは南欧経済の弱さを背景に旧ドイツマルクの水準に比べ安い水準のままであると批判した。その一方で、円については、小論文のどこにも触れられていない。

小論文における日本への批判は、対米貿易黒字が大きいことに集中しており、これはトランプ大統領や同政権の言動と一致する。例えば大統領就任前の記者会見で、米国の貿易協定は惨事であるとし、中国やメキシコと一緒に日本を名指しで批判した。

10日の日米首脳会談では、円相場に関する言及はまったくなく、麻生太郎副総理とペンス副大統領をトップとする経済対話にて日米間の貿易に関する枠組みを議論することが決まった。

円安是正は米貿易赤字の削減につながるため、トランプ政権は円安是正に動く、との見方も可能なように思えるかもしれない。一部からは、その根拠として、日本は1980年代から90年代にかけて、日米構造協議、日米包括経済協議などを通じ貿易不均衡問題に関し米国から圧力をかけられ、ドル円相場は円高方向に向かったことが指摘されている。

しかし、ここで忘れてはならないのは、円高が進んだ90年代において米国の貿易赤字は対日赤字も含め縮小することはなく、むしろ拡大したという事実である。

また、さまざまな実証研究によると、貿易収支に与える影響は、為替変動よりも2国間の景気や制度変更の方が大きいことが知られている(しかも、為替変動の影響が表れるのは数年後とされる)。効率性・生産性を重んじ、短気な姿勢が目立つトランプ大統領が、数年後に少しだけ表れるかもしれない米貿易赤字の縮小効果を期待し、円安是正に動くとの見方に説得力があるとは思えない。

<円安誘導を批判したトランプ大統領の真意は>

むしろ、トランプ大統領は、貿易赤字削減効果がいつ表れるか定かではない円安是正よりも、より直接的かつ強力な効果が得られると期待される貿易不均衡の是正策を日本政府に要求するのではないか。

TPP交渉からの撤退を宣言したのも、多国間協議により共通ルールを作られてしまうと、米貿易赤字の削減が難しくなる可能性があるためで、2国間協議を通じ日本政府に米貿易赤字削減のために動くよう圧力をかけることが有効であると考えたと推察される。

もちろん、過去の発言から考えれば、トランプ大統領が今後もツイッターなどを通じ、円安を批判する発言を繰り返す可能性は否定できない。しかし、その目的は、ドル円相場をドル安・円高方向に誘導することではなく、円安批判を通じ日本政府に圧力をかけることにあるとみるべきだ。

仮に筆者のこうした見方が誤っており、トランプ政権が真剣に円安是正・円高誘導を望んだとしても、ドル円相場がその通りに動くとも言い切れない。当局の意向が為替市場に影響を与えることは否定しないが、為替市場参加者の多様性の高まりや取引高の拡大を背景に、近年の為替市場は当局の意向通りに動かなくなっている。中国当局は巨額の元買い介入を数年にわたり続けているが、元安に歯止めがかかっていないのは分かりやすい一例である。

ファンダメンタルズから考えれば、ドル円相場はむしろドル高・円安基調が続くとみるのが自然だろう。今週行われたイエレン米連邦準備理事会(FRB)議長による議会証言では、FRBが利上げを中心とする金融政策の正常化を目指す意向が強いことが改めて示された。米景気は堅調地合いを強めており、ニューヨーク連銀の経済モデル「ナウキャスト」によると、第1四半期の米成長率は3.1%と、前期(1.9%増)から大きく加速すると予想されている。

また、1月の製造業購買担当者景気指数(PMI)をみると、米国だけでなく、日本、ユーロ圏、英国など先進各国はいずれも改善方向で推移しており、株式市場は米国を中心に堅調地合いが続いている。こうした状況下で、トランプ政権の保護主義的な姿勢を理由に、いわゆるリスクオフを主因とした円買いの動きを期待するのは無理があるように思われる。

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コラム:円高予想の蔓延がもたらす投資機会

村上尚己 アライアンス・バーンスタイン(AB) マーケット・ストラテジスト

東京 15日]
年明けの118円台から2月初旬の111円台まで大きく下落したドル円相場はここ数日、落ち着きを取り戻し、112―114円台のレンジ内で推移している。トランプ米政権への期待(景気刺激策)に基づくドル高圧力と懸念(保護主義政策)に起因するドル安圧力が拮抗している格好だ。

筆者は、1月17日付のコラムで、「米保護主義政策への懸念を背景とする年初からのドル円下落は長期化しない」と述べた。実際、現段階ではその通りの展開となっている。

振り返れば、日本のエコノミストや為替アナリストの多くは、昨年11月のトランプ氏の大統領選勝利に前後して、ことあるごとに「円高リスク」を吹聴してきた。筆者はそのたびに、円高予想が跋扈(ばっこ)すること自体が大きな投資機会をもたらすとの見解を述べてきたわけだが、実際に悲観論が蔓延していたタイミングがリスク資産の押し目買いの好機となったことは明らかだろう。

そして、足元でも同じような機会が生じている。国内のエコノミストや為替アナリストの多くが相も変わらず「円高リスク」を唱えているためだ。今度は「米中対立」に起因するドル安懸念、そして10日に行われた日米首脳会談と結び付けた円高懸念などが取り沙汰されている。

もちろん、トランプ政権が保護主義政策を打ち出しているのは事実だ。ただ、実際にドル安が進むかどうかは、米経済が減速し、2016年9月までのように米連邦準備理事会(FRB)が利上げを中断するかどうかにかかっている。

この点については、トランプ政権が掲げる財政拡張(減税やインフラ投資)の有無が決定的に重要な鍵を握ると見ている。財政拡張が実現すれば、成長率は押し上げられ、FRBの利上げが継続し、2%インフレ目標達成に向けて追い風となるだろう。ちなみに、筆者は、米経済はまだ完全雇用に達していないと分析している。よって、財政拡張によるバブル発生の懸念も現時点では杞憂だと考える。

一方、ミクロ政策に限定されると見ている保護主義政策は特定セクターに影響を及ぼす可能性はあるが、ドル円のすう勢には影響しない。以上の筆者の見方は、実はトランプ大統領当選直後から全く変わっていない。

また、衰退産業への保護政策の本質は外国との競争ではなく国内の分配問題だ。トランプ大統領が長期政権を目指すならば、そのことをいずれ理解するのではないか。

<初の日米首脳会談に高望みし過ぎ>

さて、10日の日米首脳会談は、大統領別荘地でのゴルフを通じてトランプ大統領と安倍晋三首相が濃密な時間を過ごしたということだけでも、両国の外交・安全保障関係が強まる点で、心配性な市場参加者を安堵させたのではなろうか(筆者にとってはほぼ想定通りだ)。

そして、経済問題に関する日米対話の新たな枠組み作りについて、麻生太郎副総理と、日本の自動車工場が多いインディアナ州知事だったペンス副大統領のリーダーシップに委ねる格好となったのも望ましい流れだろう。

ところが、「円高リスク」をことさら唱えるエコノミストやアナリストには、どうやら違う風景が見えているようだ。今回の日米首脳会談では「円安批判は封印されただけ」などとの声が聞こえてくる。

確かにドル円相場で2月初旬に一時、111円台まで円高に動いた背景には、トランプリスクへの懸念があったのかもしれないが、今回の会談はトップ同士の信頼関係を高め、そして安全保障体制を確認することが主たる目的だった。また、米国では経済閣僚人事の任命が遅れていた。そうした中で、トランプ大統領の口から直接「円安批判」が飛び出すという懸念そのものが、そもそも行き過ぎだっただけのことだろう。

円高派の指摘の中で特に納得がいかないのは、安全保障面では強固な同盟を確認するという成果があったものの、最大の懸案事項である通商・為替など経済問題では、摩擦を避けたがゆえに、多くの不透明要素が残った、といった論調だ。

筆者は、「日米中の安全保障動向が経済活動を揺るがす」リスクシナリオを一応念頭に置いているので、円高派の理屈には違和感を覚える。不透明要素が残ったなどという批評は、初の日米首脳会談に高望みし過ぎではないか。

また、一部では、トランプ大統領の暴走を日本は防ぐべきなどという論調も聞かれるが、(是非はともかく)トランプ政権は国民に示した公約を忠実に実行しようとしているだけだ。他国の内政に首を突っ込むような役回りを安倍政権に求めるのは筋違いだろう。

確かに、今後もトランプ大統領が、自国製造業への配慮をアピールするため、ドル安誘導を想起させる言動をソーシャルメディア上などで発信する可能性は否めない。そうした場面では、ドル安に振れるかもしれない。とはいえ、真の円高リスク(トランプ政権の機能不全で米経済が減速する兆候)が現時点ではほとんど見られない以上、政治リスクに起因するドル安円高は、2016年のようには長続きしないだろう。

日米首脳会談後も日本の大手メディアやエコノミスト・アナリストの論調がどちらかと言えば円高方向の相場観に傾いていることを踏まえれば、外貨建て資産などリスク資産全般についてリターンの上ぶれ余地が期待できると筆者は見ている。

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トランプ氏「不人気指数」と円相場の今後の節目

日本経済新聞  編集委員 田村正之

安倍晋三首相とトランプ米大統領との首脳会談終了後も、ドル円相場はトランプ氏の発言や欧州の政治情勢などから折に触れ大きく揺れる局面が続きそうだ。投資家が意識しそうな今後のドル円相場の節目を頭に入れておきたい。

米政治情報サイト「RealClearPolitics」では様々な調査機関が調べたトランプ氏の好感度がわかる。「嫌い」の数値から「好き」を引いた数値を不人気度と考えると、不人気度が下がるのと逆行してドル高・円安が進む傾向がある。

三井住友アセットマネジメントの石山仁氏は「トランプ氏の政策に光と影の面があるからだ」とみる。「不人気度が下がると光の部分、つまり雇用増やインフラ投資など米経済が強くなる面が注目されてドル高傾向になり、不人気度が上がると影の部分、つまり保護主義がもたらす米経済のマイナス面が注目されてドル安傾向になりやすい」

■意外に高まらない不人気指数

指数の動きから浮かぶのは米国世論の複雑な状況だ。最近の移民政策などのごたごたを海外から見ていると、不人気度が急騰しそうに見えるがそれほど上昇していない。「調査にもよるが、移民規制に関し米国内の世論は拮抗している。不人気度が高まってドル安・円高が一方向に進む状況には必ずしもなっていない」(石山氏)

トランプ氏に引き続き批判的な米大手メディアの報道だけに接していると、トランプ氏の言動がマーケットに与える影響も見誤る難しさがありそうだ。

とはいえ今後もトランプ氏の様々な発言でドル円相場が大きく触れる場面は多くありそうだ。今後の節目にはどういうものがあるのか。

短中期的に為替への影響が大きい日米の10年物国債金利差とドル円相場のアベノミクス開始後の相関を調べ、10日時点の金利差(約2.3%)から為替の妥当値を計算してみると、約113円となった。

チャートで意識されやすいのは変動幅の3分の1戻し。昨年11月のトランプ氏当選が決まった直後の円の最高値101円19銭から昨年12月の安値118円66銭までの、円安進行幅の3分の1戻しは約113円で、先ほどの長期金利差をもとにした妥当値にほぼ一致する。

今後の注目は今月下旬の大統領所信表明演説、3月の予算教書など。実際の財政出動が市場の予測を上回るとみられ始めると、円安加速の可能性もある。13週移動平均の約115円や昨年12月安値を超えるような状況があれば、昨年1月安値の121円69銭が意識されそうだ。

ただしみずほ証券の三浦豊氏は「今後もドル高へのけん制発言は折に触れ出そうで、大幅な円安は当面見込みづらい。2~3月にかけて110~115円前後の一進一退の値動きが続く可能性がある」とみている。

■「理不尽な円高」懸念も

逆に自国通貨高を嫌うトランプ氏による「理不尽な円高」の可能性を恐れるのはみずほ銀行の唐鎌大輔氏。米ドルの実効相場のなかでの日本円の比率は今やかなり小さい。しかし政治不安を抱える欧州、通貨安圧力に悩む中国など他の“標的”は通貨高になりにくい状況だ。

「一方で世界最大の対外純資産を持ち、低インフレも背景に日本円は通貨高の余地が大きい」(唐鎌氏)。同氏の年末のドル円相場の予想は105円だ。

さきほどと同様に日米長期金利差とドル円相場の関係から、やや長期で2001年以降で妥当値を計算してみると約106円だ。

市場が期待している米国の巨額の財政出動が期待外れになったり欧州政治のリスクが高まったりすれば、円の急騰もありうる。長期の為替相場の目安になる購買力平価(生産者物価ベース、1973年基準)では約97円が現在の妥当値だ。

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FOMC議事要旨「かなり早期の追加利上げが適切」

ワシントン=長沼亜紀】
米連邦準備理事会(FRB)は22日、1月31~2月1日開催の米連邦公開市場委員会(FOMC)の議事要旨を公表した。会合では追加利上げを見送ったが、多くの委員が雇用と物価が予測通り改善すれば「かなり早期の追加利上げが適切」と考えていたことがわかった。

議事要旨によると、委員は、財政・経済政策の経済への影響の不確実性が高まったが、短期的な景気の上振れ・下振れリスクはぼぼ均衡しているとの点で一致。景気見通しと金融政策判断は昨年12月会合から「ほとんど変わっていない」として利上げ見送りを決定した。

しかし今後、労働市場と物価上昇率が予測通りもしくは予測以上に進展したり、雇用と物価の目標を上回るリスクが高まったりした場合には、多くの委員がかなり早期の利上げが必要になると述べた。一部は、次回会合を含め利上げを適宜進めることで、FOMCは経済情勢の変化に対応する上で一層の柔軟性を得られると主張した。

また、複数の委員は、特に経済が予測より速く拡大した場合、失業率が長期的に正常な水準を下回るリスクは高いとして、利上げを待ちすぎることに懸念を表明した。

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コラム:トランプ氏の円安誘導批判は「空砲」

池田雄之輔 野村証券 チーフ為替ストラテジスト

東京 3日]
トランプ米大統領が、「いよいよ日本たたきを開始した」との見方が広がっている。1月31日に製薬会社トップを集めた会合で大統領は、「中国や日本は何年も市場で通貨安誘導を繰り広げ、米国がばかを見ている」と述べたという。

先立って、1月23日には米国製造業のビジネスリーダーらを前に、日米の自動車貿易について「不公平だ」と繰り返し言及したとされる。同26日には、共和党上下両院の集会で演説し、今後の通商交渉には「通貨安誘導に対し極めて強い制限を導入していく」と表明したことが報道されている。

これらのコメントを額面通りに受け止めれば、黒田東彦総裁の就任以来、日銀が大規模に継続している資産買い入れプログラムが批判の対象になっているように見えるし、「円安の阻止を狙っている」との解釈もあり得る。しかし、トランプ大統領がおそらく即興で繰り出している言葉をいちいち真に受けて動揺するようでは、「ドル安を望む」(筆者はその点についてさえ懐疑的だが)トランプ大統領の「思うツボ」である。

現在の国際金融市場においては、米大統領といえども為替相場に与えられる持続的な影響はきわめて限られていることを認識する必要がある。以下では、1)口先介入の効果は今後消えていくと予想されること、2)そもそも新政権がドル安を強く志向しているとは限らないこと、3)外交努力次第で「日本たたき」は抑えられる可能性があること、を議論したい。

<実力行使を伴わぬ口先介入の限界>

まず、トランプ大統領が「ドルは高すぎる」などと口先介入を今後も連発すれば、結果的にドル安誘導の効果が表れてしまうとの見方を検討してみよう。口先介入が持続的な効果を持つかどうかの判定は「実力行使が控えているか否か」で見極められるはずである。

米財務省が為替介入を打ち出す、ないし米連邦準備理事会(FRB)が利下げに転じる、という現実的なシナリオがあれば、市場は口先介入に対しても素直に従い、ドルロングを縮小せざるを得ないだろう。1985年のプラザ合意が強力なドル安効果を発揮したのは、各国が協調してドル売り介入に動いたからに他ならない。90年代に為替市場が当局者コメントに一喜一憂したのも、プラザ合意での力ずくのドル安誘導を直前に経験していたからという、昔の話である。

仮に米国がドル売り介入を今後実施する場合、主要7カ国(G7)のルールに従えば「ドル高は無秩序であり、世界市場にとってリスク」であることを説明し、介入についての相手当局の同意を得る必要がある。しかし、現局面で米国が「過度のドル高」と不満を表明しても、まったく説得力がない。なぜなら、昨年11月以降のドル高は米金利上昇と矛盾なく推移しており、到底「無秩序」とは言えないからである。

さらに、他国からは「通貨高に耐えられないほど景気が脆弱なら、なぜ利下げしないのか」と、反論されるだろう。米国が利上げ局面にある以上、為替介入の実施は非現実的である。そうなると口先でのドル高けん制は「空砲」にすぎないと見透かされ、市場インパクトは低減していくはずだ。

なお、「トランプ政権はG7からの脱退さえ辞さないのでは」との悲観論もあるが、それは米国が変動相場制のメカニズムそのものを否定することを意味する。「戦争が始まるかもしれない」といったレベルと同程度のわずかなテールリスクと言うべきだろう。

<即興コメントに強い意思は感じられず>

ところで、2016年にルー財務長官の「円高は秩序立っている」との口先介入はなぜ、時として円高をもたらす効果を持ったのか。それは「1ドル=100円前後まで円高が進んでも、日本は円売り介入を封印せざるを得なくなった」との現実的な連想につながり、投機勢の円ロング構築を後押ししたことが一因だった。

加えて、米連邦公開市場委員会(FOMC)メンバーがことあるごとに、「ドル高は景気、インフレを下押ししている」と発言し、利上げ期待の上昇を抑えることに成功したことも影響しただろう。現局面でも、イエレンFRB議長が「ドル高によって利上げの必要性が低下している」と発言する場合には、本物のドル安圧力が加わると予想される。

次に、そもそもトランプ政権がドル安を本気で望んでいるかどうかも、慎重に検討されるべきだろう。G7のルールを無視してまでも、ドルを本当に押し下げたいのであれば、なぜトランプ大統領は「ドル安を追求する」「FRBは利下げすべき」と言わないのか。トランプ大統領が、即興で発信している為替へのコメントには強い意志が感じられないのだ。

一方、財務長官就任が見込まれるムニューチン氏は「強いドルは長期的に重要」と述べ、従来の米財務省の立場を一貫して擁護している。米国市場に投資魅力があり、それがドル高につながっているのであれば良い、との考え方だ。「最重要なのは経済成長と雇用拡大」と、為替相場そのものをターゲットにはしない方向も示している。

同氏の発言としては、「過度に強いドルは短期的にマイナスの公算」とのコメントも伝わったが、それは一般論での言及であり、現在のドルを強すぎると認定したわけではない点に注意が必要だ。

<年末1ドル120―125円予想を維持>

10日の日米首脳会談は、トランプ大統領の不当な口先介入を許さないためにも、きわめて重要な機会となるだろう。筆者は、昨年12月27日付の日本経済新聞に掲載された菅義偉官房長官の「為替の危機管理をちゃんとやっている」との発言は、トランプ政権から円安批判、日本たたきの動きが出ないよう、安倍政権が外交努力をすでに開始していた証拠だと解釈している。

首脳会談で日本側としては、1)英国に次ぐ世界第2位の対米直接投資を通じて、日本企業は米国の雇用拡大に貢献していること、2)1ドル=80円から120円へと円安が進んだ「アベノミクス」の期間においても対米貿易黒字は拡大どころか若干減少していること、3)日本は2012年以降、為替介入を一切打ち出していないこと、4)日銀の緩和努力は日本経済を強化し、ひいては米国からの輸入にもプラスに作用すること、を地道に説明すると予想される。一方、米国には「他国の金融政策には口出ししない」というG7ルールの順守を求めることになろう。

トランプ政権が、経済政策の中心に保護主義的通商政策を掲げており、貿易赤字縮小を優先課題とすることは明らかになってきた。しかし、その戦略の骨格は、1)中国に対する参入障壁撤廃と内需拡大の要請、鉄鋼などのダンピング輸出のけん制、2)米国製造業のメキシコへの生産シフトの抑制、といった点に絞られている。

世界貿易機関(WTO)違反となる高率関税の適用は、あくまで最終手段であり、実施は念頭にないことをロス次期商務長官は明言している。通貨政策については、仮にドル安を望んでいるとしても、それを実現する手段をホワイトハウスは持っていない。

トランプ大統領の口先介入に恐れをなすのでは、思うツボになってしまう。為替相場についての「トランプ砲」はあくまで空砲であり、神通力を失うのは時間の問題と見るべきだろう。

重要なのは、米国経済の強さであり、2017年は2回ないし3回の利上げが想定できるという事実である。金利が急上昇するなどして株価が大きく崩れる場合には、ドル円相場が金利差からかい離することもあり得るが、あえて現時点でメインシナリオにする理由もない。2017年末のドル円相場は、米利上げが2回なら120円、3回なら125円との予想を維持している。

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「トランプ砲」では円高続かず

日本経済新聞 経済部次長 小栗太

「強いドルは我々を殺している」「中国や日本は何年も通貨安誘導を繰り広げてきた」――。トランプ米大統領の口から突然飛び出す円安批判の「トランプ砲」。そのたびに円高に振れるが、円高が加速する気配はいっこうに漂わない。なぜか。これまで日本は2度の外圧による円急騰に翻弄されてきたが、3度目の今回は経済構造の変化が円高の加速を妨げているからだ。

■22年前の生々しい記憶

1995年春の円急騰を覚えているだろうか。前年の日米包括経済協議の決裂を機に円高が加速。わずか1カ月余りの間に1ドル=95円→90円→85円→80円と値が飛ぶ未曽有の円高・ドル安が進んだ。そして95年4月。ブラウン米商務長官(当時)の「ドルが対円で下落しても米国政府の日米自動車協議への強い姿勢は変わらない」との発言で一気に80円を突破し、当時の円最高値を記録した。

あれから22年。トランプ氏の対米貿易黒字国に対する円安批判を聞いたベテラン為替ディーラーの脳裏には、当時の生々しい記憶がよみがえったはずだ。日米貿易摩擦=円急騰。ヘッジファンドは当時の構図を蒸し返し、トランプ氏が発言するたびに大規模な円買いを仕掛けるが、意外なほど円高が加速しない。

円高が続かない理由は、当時の円急騰の構図を詳細にたどることで見えてくる。

95年の円高は特異な形で進んだ。まずヘッジファンドが90円とか85円といったキリのいい水準を目標に円買いを仕掛ける。すると社内の想定為替レートをやはりキリのいい水準に設定した日本の輸出企業が業績への影響を心配して慌てて円買い注文を出し、円高が加速する。そこでヘッジファンドが次のキリのいい水準を目指して再び円買いを仕掛けるという構図だ。この循環が1カ月余りで20円近い円急騰劇を生んだ。

■巨額黒字が円急騰の条件

この循環が加速するには条件がある。日本企業が巨額の円買い注文を抱えている、つまり日本が巨額の貿易黒字を抱えていることが必要になるわけだ。

この点が今回と決定的に違う部分だ。95年の日本の貿易黒字額は約10兆円。これに対し、2015年は2兆7900億円の赤字。16年は原油安で輸入が急減したために一時的に黒字になったが、それでも黒字額は4兆700億円と95年当時の半分以下にすぎない。2017年は原油相場の回復で再び赤字に転じる可能性も否めない。

つまりヘッジファンドが円買いを仕掛けても、輸出企業による需給の円買い注文が膨らまず、円高が加速しない。それがトランプ砲の連射でも110円の節目を突き抜けられない理由だ。しかも日銀のマイナス金利政策の影響で生命保険会社などはこの20年で最大級の外債投資を進めてきた。需給面では円買いよりも円売り圧力の方が強まりやすい。

同じ構図は最初の外圧による円急騰にも当てはまる。32年前の先進5カ国のプラザ合意によるドル高是正だ。当時も日本は10兆円を超える貿易黒字を抱えていたが、さらにもう1つ、需給の円買い要因があった。日本も加わった先進国による巨額のドル売り協調介入だ。過去の2度の外圧による円急騰は巨額の需給の円買いが伴うことで実現したというのが真相だ。

日米首脳会談を経て、春ごろには日米の新経済対話が始まる。財政政策や金融政策などのマクロ経済政策での連携がテーマに挙がるだけに、たとえ直接的な円安批判でなくてもヘッジファンドがトランプ氏の発言を捉えて円買いを仕掛ける場面は今後も続きそうだ。だが95年のような需給の構図が見当たらない以上、円急騰が起きる可能性は限りなく小さくなっている。

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ドル/円は底堅い、上昇の決め手を欠きもみ合いか=今週の外為市場

東京 20日 ロイター]
今週の外為市場でドル/円は、トランプ米政権の政策や米早期利上げへの思惑がくすぶり、底堅い展開になりそうだ。ただ、上昇の決め手も欠くことから上値は限られ、狭いレンジでの推移が想定される。

予想レンジはドル/円が112.00―115.00、ユーロ/ドルが1.05―1.08ドル。

日米首脳会談を無難に通過したことで、米国の過度な保護主義やドル高けん制への警戒感は後退している。一方で、米経済指標の堅調な数字や米連邦準備理事会(FRB)高官らによるタカ派寄りの発言が目立ち、米早期利上げへの思惑も根強く相場は支えられそうだ。

月末にトランプ米大統領の議会演説を控えていることもあって、減税や財政出動への思惑がくすぶりやすく、みずほ証券のチーフFXストラテジスト、鈴木健吾氏は「ドル/円は上方向のバイアスかかりやすい」と指摘する。

ただ、目先はトレンドに影響しそうなイベントに乏しく「ドル買いの決め手にも欠く。115円はなかなか超えられそうにない」(みずほ証券の鈴木氏)という。

22日には米連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨が発表される。目新しい材料は期待薄とみられているが、このところのFRB高官らの発言を踏まえて、議事要旨では「どちらかといえば、タカ派材料を探すことになるのではないか」(国内金融機関)という。

目先の関心は米政策の行方に移っており、トランプ氏のツイッターなどの発言で市場の思惑が高まる局面もあり得るが、具体性を欠く内容なら反応は限定的とみられている。

米国ではこのほか、複数の住宅関連指標などの発表が予定されている。20日は休日。

日本では20日に貿易収支の発表がある。トランプ氏の「貿易不均衡」発言を踏まえて貿易黒字が膨らめば下方圧力が意識されやすいとの警戒感はやや後退している。原油価格が一時期に比べ持ち直しにあることから、無難な数字を見込む向きは多い。

ユーロも1.05ドル付近で底堅さが意識される一方、「上昇してもショートカバー中心で、トレンドは出そうにない」(別の国内金融機関)といい、狭いレンジでの推移が見込まれている。

フランス大統領選への警戒感がくすぶるほか、経済指標としては、21日にユーロ圏の製造業・サービス業PMI速報、22日に独IFO景気指数の発表が予定されている。

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信じきれぬ円安・ドル高 米減税での景気拡大に不透明感

日本経済新聞 電子版

米利上げ観測が強まったにもかかわらず、円安・ドル高は限定的との見方が浮上している。法人減税などの税制改革による米国の景気拡大が、期待していたほど円滑には進まないのではないかとの不透明感が漂っているためだ。機関投資家の円売り意欲も乏しく、「長期的に円安・ドル高になる」というシナリオはひとまず後退している。

「今後数回の会合で判断する」。14日の米上院銀行委員会で米連邦準備理事会(FRB)のイエレン議長は利上げを巡りこう語った。市場で後退していた「3月利上げ説」に含みを持たせたが、市場の反応は鈍い。円相場は議会証言の直前の1ドル=113円台半ばから114円台半ばまで円安・ドル高が進んだものの、さらに円を売る動きは限られている。

市場関係者が注目するのはFRBの金融政策よりもむしろ、トランプ米大統領による経済運営の行方だ。クレディ・アグリコル銀行の斎藤裕司氏は「イエレン議長が利上げに積極的な『タカ派』になったからといって、ドル高にかじを切るわけにいかない」と話す。

保護主義や反移民政策などへの懸念はありながらも、大規模な減税があるなら景気が拡大し、ドル買いが進む――。市場参加者はこう読んでいたが、期待がしぼみ始めている。象徴的な出来事が、13日のフリン米大統領補佐官の辞任だ。国家安全保障担当で市場とは直接関係ないはずだが、一報が流れるや円が買われた。政権運営がうまくいかないなら、経済政策もスムーズに進まなくなるとの見立てだ。

実際、例年通りならすでに次年度予算に向けた大統領の方針を示す予算教書が発表されているはず。だが現状では3月になる公算。「せめてスケジュール感がわからないと」と国内運用会社の外債担当者は嘆息する。

こうした市場心理は、国内の機関投資家の米国債への投資に響く。外債投資は、通貨スワップ取引で為替変動をへッジするかどうかの二択を迫られる。足元はヘッジコストが高いため、「ヘッジをかけずに為替差益を狙う運用手法のほうが有利」(損害保険ジャパン日本興亜の西田拓郎氏)。為替ヘッジをかけない投資は円安につながる。

ところがこのスタイルだと、大幅な円安・ドル高が見込めることが投資の条件になる。米金利の上昇による債券価格の下落が、為替差益を上回る恐れがあるからだ。だがドル高につながる米財政政策の先行きは見通しにくくなっている。

そもそも「110円台半ばのいまの水準だと、円ベースの外債は投資するには割高」(みずほ銀行の唐鎌大輔氏)。機関投資家はいったん円高に振れない限り外債購入を膨らませにくく、円安の推進力になりづらい。

再び円安の流れが強まると投資家が信じられるか。トランプ大統領の経済運営の行方が見えてこない限り、投資家が身動きをとれない状況が続きそうだ。

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コラム:トランプ流保護主義に「ドル安」は不可欠

亀岡裕次 大和証券 チーフ為替アナリスト

東京 26日]
米大統領選挙後のドル高・円安が反転している。これは一時的調整なのか、それともトランプ相場が曲がり角を迎えたのか。ドル円に影響を与える4つの点(米国金利、リスク許容度、米保護主義、日銀政策)から、相場展開を考えてみたい。

まず、ドル安に作用した一因は、米国金利の低下だ。米連邦準備理事会(FRB)の利上げ期待は、昨年12月の利上げ直後をピークに後退し始めた。2年物などの国債金利は日本も低下したために日米金利差はほとんど縮小しなかったが、10年物などの国債金利は米国の低下が寄与して日米金利差が明らかに縮小した。

一転して1月後半は、米株価の上昇に伴い米金利が反発した。ただ、日米10年金利差は拡大に転じたものの、ドル円はほとんど反発していない。

これは、米国の期待インフレ率が上昇する一方で、実質金利が低下していることが一因か。期待インフレ率上昇の背景には、原油価格の高止まりや米インフレ率の上昇もあるが、完全雇用の米国経済に財政刺激が加わることでインフレ率が高まりやすいとの見方もあるだろう。財政刺激がインフレにつながりやすい一方で景気加速にはつながりにくいとの見方から、実質金利が低下したのではないか。

実質金利は為替相場との連動性が高い。インフレ期待により米国の名目金利が示すほどには実質金利が上昇しないとなると、米金利はドル円の上昇に作用しにくい。

<リスクオンの円安は持続性に欠ける>

クロス円が1月半ばにかけて下落したことから分かるように、ドル円の下落にはドル安だけでなく円高も寄与した。円高は、海外金利とリスク許容度の低下に原因があるとみられる。だが、1月後半は米株価が最高値を更新するなど、リスク許容度の上昇がクロス円の反発(円安)を招いている。

米株高は、米企業決算やトランプ政権の財政・規制緩和策よりも、保護主義政策によるドル安が米成長期待を高めているためではないか。ドル安がリスクオンの円安要因になっている。リスクオンはドル実効為替を下落させやすく、ドル安でリスクオンになり、ドル安がさらに進むという循環も生まれやすい。

ただし、ドル安は、米インフレ期待を高めて金利を上昇させることで株価を割高にし、株高の進行を難しくする。また、ドル安の一方で通貨高が進む国々の中には、景気悪化懸念でリスクオフに傾く国も出てくるだろう。

では、ドル安が米経済成長期待を支え、米株高とリスクオンの円安を招く動きは続くだろうか。鍵を握る要因の1つは経済指標だ。11、12月と連続して大幅に改善した米ミシガン大学消費者信頼感指数が、1月はわずかに悪化した。米企業景況感にも同様の傾向が表れる可能性がある。

為替変動が経済指標に影響を及ぼすまでに、発表に要する期間を含めて2―3カ月のタイムラグを持つケースが多い。1月のドル安の好影響よりも12月にかけてのドル高の悪影響が、今後発表される米経済指標に表れやすいだろう。

また、中国における年初からの自動車減税縮小が同国の経済指標に悪影響を及ぼしやすいだろう。主要国の経済指標が市場予想を下回ることを受けて経済成長期待が後退し、リスクオフの円高に転じる可能性がある。

<米保護主義政策の推進にはドル安が必要>

最近のドル安を生んでいる大きな要因が、トランプ大統領の保護主義政策だ。大統領が掲げた「米国製品を買い、米国人を雇う」という2つの単純なルールを、国民向けの呼び掛けや企業へのけん制だけで実現することは難しい。

大統領は、環太平洋連携協定(TPP)離脱や北米自由貿易協定(NAFTA)再交渉を表明した。通商交渉により米国の輸入関税引き上げや相手国の輸入関税引き下げを図り、米国の輸入を減らし輸出や国内生産を増やそうとしているが、それは可能なのだろうか。

米国が輸入関税を引き上げるなら、相手国も輸入関税を引き下げるどころか引き上げようとするだろうし、米国に有利となるように通商交渉を進めることは難しい。米国がある国からの輸入関税を引き上げても、米国製品に価格競争力がなければ国内生産で輸入を代替できず、他国からの輸入で代替されるケースも出てくるだろう。あるいは、輸入価格が上昇しても輸入数量が減らずに輸入金額が増えるだけかもしれない。

関税引き上げという貿易障壁を高める施策は確実に米国のコストを高めるわけで、同時に米国製品を売りやすく(他国が買いやすく)する状況にしなければ、国内生産誘発のメリットよりもコストアップのデメリットが大きくなる。

また、企業が米国内で投資・生産・雇用を拡大しても、海外生産に比べてコストが上昇するだけで、製品の売れ行きが伸びずに在庫が増えるようなら、米国回帰は続かないだろう。結局、米国が保護主義政策を推し進めるためには、ドル安にしてこれまでよりも国内生産と輸出を有利に、輸入を不利にするしかないはずだ。

トランプ大統領が17日付の米紙インタビュー記事で、「われわれの通貨は強すぎる」「価値を引き下げる必要があるかもしれない」と述べていたのは、ドル安にしたいと考えている証しにほかならない。別の米系メディアによれば、ムニューチン次期米財務長官も上院議員宛ての書簡で、「時折、過度に強いドルは経済に短期的に悪影響を与える可能性がある」との考えを示したという。もはや、トランプ政権の通貨戦略は明確だ。

減税やインフラ投資をしても米国景気が減速するようなら、米金利低下のドル安、リスクオフの円高とともに、米保護主義のドル安圧力が強まりやすい。トランプ政権の通貨政策は「ドル高抑制」から「ドル高是正(ドル安志向)」にシフトし、主要な貿易相手国に通貨高圧力をかけるだろう。その筆頭は、対米貿易黒字が巨額な中国であり、人民元安を「為替操作」と批判している。

ただし、直近1年間の米国の2国間貿易赤字の大きさは、中国、日本、ドイツ、メキシコの順であり、日本も対米貿易黒字が大きい。そのうえ、主要通貨の実質実効為替を比較した場合、長期的な平均水準に比べて近年の通貨安が目立つ通貨の1つが円だ。選挙中に「円安誘導」と批判したトランプ大統領は、対日貿易赤字の大きさに不満を表している。日本が通貨高圧力を受けるターゲットとなる可能性は十分にあるだろう。

<日銀政策調整による円高にも注意>

日銀の中曽宏副総裁は20日の講演で、為替スワップ市場における非米系銀行のドル調達プレミアムが拡大している背景に、米国と日欧の金融政策の方向性の違いがあることを指摘した。そして、国際金融システムの不安定化を招くことがないようにするのも中央銀行の責務とし、邦銀の外貨資金繰りの状況を注視すると述べた。量的緩和とマイナス金利を続けている日欧の金融政策が招く問題点の一端を指摘したとも言える。

欧州中銀(ECB)はすでに資産買い入れペースの減額を決定したが、日銀の年間約80兆円ペースの資産買い入れが永続的でない以上、遠くないうちに日銀も減額する可能性がある。日銀が、金利が上昇している超長期国債の買い入れを増額せず、金利が低下している中期国債の買い入れを減額(回数減)したのは、その布石ではないか。

トランプ政権が日本に円高圧力をかける中で、日銀の金融緩和政策を批判することも十分にあり得る。日銀の政策調整(資産買い入れ減額や金利操作目標引き上げ)により円高が進む可能性にも注意すべきだろう。

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ドル上昇、FRB議長証言で利上げペース加速観測=NY市場

[ニューヨーク 14日 ロイター]
終盤のニューヨーク外為市場では、ドルが主要通貨に対して上昇した。イエレン米連邦準備理事会(FRB)議長の議会証言を受け、利上げペースが予想より加速するとの観測が広がった。

イエレン議長は上院銀行住宅都市委員会における半期証言で、「金融緩和の解除まで時間をかけ過ぎるのは賢明ではない」と発言。他のFRB当局者が最近発している、足元の経済状況では早めの利上げが好ましいとのメッセージを一段と強める形になった。

終盤のドル/円は0.4%高の114.16円で、一時2週間ぶり高値の114.47円まで上がった。ユーロ/ドルEUR=は0.2%安の1.0572ドル。

ブラウン・ブラザーズ・ハリマンのチーフ投資ストラテジスト、スコット・クレモンズ氏は「イエレン議長は年内3回の利上げに向けた地ならしをしている」と指摘した。

CMEグループのFEDウオッチによると、フェデラルファンド(FF)先物が織り込む2017年中の利上げが最低3回となる確率は、13日の33%から約41%に高まった。

海外市場では、フリン米大統領補佐官(国家安全保障問題担当)の辞任がトランプ政権の経済政策運営にも悪影響を及ぼす事態が懸念され、ドルが売られる場面があった。

ただニューヨーク市場に入り、米労働省が発表した1月卸売物価指数(PPI)の前月比上昇率が4年4カ月ぶりの大幅な伸びを示すと、米国の物価上昇率はFRBが目標とする2%に近づいているとの見方を裏付ける内容と受け止められ、ドルは持ち直した。

主要6通貨に対するドル指数は100.90まで下げた後、一時3週間ぶり高値の101.38を付けた。


米FRBは利上げ継続へ、待ち過ぎは賢明でない=イエレン議長

[ワシントン 14日 ロイター]
米連邦準備理事会(FRB)のイエレン議長は14日、上院銀行委員会で半期に一度の証言を行い、今後の連邦公開市場委員会(FOMC)で利上げが必要となる可能性が高いと述べた。ただトランプ新政権の経済政策をめぐりかなりの先行き不透明性が出ているとの認識も示した。

イエレン議長は証言で、雇用市場が一段と引き締まりインフレ率が目標とする2%に向け上昇していくとFRBが予想していることに言及し、「緩和措置の解除を待ち過ぎることは賢明ではない」と指摘。利上げを遅らせれば後手に回り、結果的に速いペースでの利上げを余儀なくされ、リセッション(景気後退)を招く恐れがあるとした。

その上で「今後のFOMCで、雇用とインフレがわれわれの予想に沿って進展し続けているか検証していく。予想通りに進展している場合、フェデラルファンド(FF)金利の一段の調整が適切となる公算が大きい」と述べた。

ただ、FRB当局者が年内に3回の利上げが正当化されると予想しているかについては言及しなかった。また、今年初めての利上げが次回3月会合で決定されるのか、その次の6月会合になるのかについても明言を避け、議長は「3月か5月か、それとも6月か。具体的な時期は言えない」とした。アナリストの間では6月会合が有力との見方が大勢となっている。

イエレン議長はまた、労働市場はかなり引き締まっているとの認識を表明。雇用の伸びは力強く、長期的に持続可能な水準を上回っている公算が大きいとした。その上で、労働市場が過度に引き締まらないよう注意する必要があると述べた。

インフレ率は数年にわたり、FRBの目標を下回って推移しているが、議長は市場ベースのインフレ指標が依然として低水準ながらも、足元で上昇していることは心強いとした。

賃金の伸びについては、現在の水準をいく分上回るペースがFRBのインフレ目標と整合すると指摘した。

議長は今後数カ月に、どのようにバランスシートを縮小していくかについて協議することも明らかにした。ただ、バランスシートの縮小は現在の利上げ局面がかなり進んだ段階で着手するとの方針をあらためて示した。

バランスシートの規模は最終的には、現時点よりもかなり小さくなるとしたほか、段階的に償還資金の再投資を停止し、米国債が中心の構成になることが望ましいとの考えを示した。委員会はできる限り、短期金利に依存することを望んでいるとも述べた。

トランプ大統領が金融規制改革法(ドッド・フランク法)の見直しを指示したことをめぐっては、大統領令の基本原則には同意するとしたが、米銀に対する年次ストレステスト(健全性審査)は金融規制の柱であり「監視プロセスを大きく強化した」とし、擁護する立場を示した。

イエレン議長の議会証言はトランプ政権の発足後初めて。議長は「財政政策やその他の経済政策の変更により、景気見通しに影響が及ぶ可能性がある」と指摘。ただ、どのような政策の変更が行われるのか、また経済にどのような影響が及ぶのか把握するのは現時点では時期尚早との考えを示した。またFRB当局者の多くは、トランプ政権下における経済政策の変更について憶測しないことを決めたと述べた。

イエレン議長は税制や財政をめぐる特定の提案について立ち入るようなことはしたくないとしながらも、政策担当者に対し米企業の効率性を高めることの重要性を念頭に置くよう呼び掛けた。

財政政策については、「米国の財政を持続可能な軌道に乗せることに整合的な変更であることを望む」と述べた。


FRB議長議会証言:識者はこうみる

[ 14日 ロイター]
イエレン米連邦準備理事会(FRB)議長は14日、上院銀行委員会で半期に一度の証言を行った。

市場関係者のコメントは以下の通り。

<BMOキャピタル・マーケッツの米金利戦略部門責任者、イアン・リンジェン氏>

タカ派的だった。だが市場はタカ派的な発言になると予想していた。金融引き締めを待ち過ぎるのは賢明ではないとのいう発言が最大の注目材料であり、市場が最も反応している。

<コモンウェルス・フォーリン・エクスチェンジ(ワシントン)の首席市場ストラテジスト、オマー・エジナー氏>

イエレン議長は3月利上げ期待を高めようとしている。トーンは全般的に、市場の想定よりタカ派色の濃いものとなった。今度の利上げを市場は過小評価しているようだ。米連邦準備理事会(FRB)が3月に動くことを意味しないが、動くという選択肢を維持したいということだろう。

<UBSウェルス・マネジメント(チューリヒ)のウルトラハイネットワース投資ストラテジスト、マクシミリアン・クンケル氏>

証言内容はハト派的なものになるとの予想が市場で出ていたことを踏まえると、幾分タカ派的だったと言える。

市場では年央と12月にそれぞれ1回ずつ利上げが実施されるとの予想が織り込まれている。3月会合での利上げは可能性はないわけではないが、利上げを決定する前にインフレの持続的な上昇を確認したいとのイエレン議長のこれまでの発言を踏まえると、3月は時期尚早のように見える。

<チェース・インベストメント・カウンセルの社長、ピーター・タッズ氏>

ほぼ自分が想定していた通りの内容となった。早ければ3月と年末を含む2─3回程度の利上げの可能性があるとのシナリオに変更はなく、市場を揺るがすようなことはないだろう。インフレ高進の可能性を阻止するために遅いよりは早い時期に利上げを実施することは賢明だと考える。ただ、今後1年ほどの間にインフレ率が大きく上昇するようには見受けられない。

<アリアンツの首席経済アドバイザー、モハメド・エラリアン氏>

イエレン氏は、米経済の改善は広がりつつあると指摘する一方で、財政政策が変更される可能性や「海外動向」等を理由に、見通しをめぐる根強い不透明性の存在や対処的な金融政策の重要性を強調した格好だ。

<BMOプライベート・バンクの最高投資責任者(CIO)、ジャック・アビリン氏>

米連邦準備理事会(FRB)は従来、利上げに対し強気の姿勢を示す一方で、行動が伴わない傾向がある。今回の発言もまるで昨年のようだ。

FRBが口を開くと、市場が下落する。FRBは減速やディスインフレ、デフレなどを懸念するあまり過熱気味の経済を許容し、発言通りに行動しない。

FRBは昨年、年4度の利上げを見込むとしたが、実際には1度限りだった。今年は3度としているが、2度利上げすれば驚きだ。FRBは言うほど利上げに積極的に動かない。

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