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日銀、ドラギ魔術にざわつく

欧州中央銀行(ECB)のドラギ総裁が12月の追加金融緩和を事前に示唆したことが、日銀内でも話題になっている。日銀とECBはともに大規模な金融緩和を続けているが、方法は大きく異なる。日銀内ではECBのような「緩和の事前通告」や「マイナス金利」は手法として選びにくいとの声が聞かれる。

ドラギ総裁は22日の理事会後の記者会見で「12月の理事会で緩和度合いを精査する」と発言。市場では12月にECBが追加緩和に踏み切るとの見方が広がり、ユーロの対ドル相場は2日間で3%下落した。

市場に影響を与えた「ドラギ・マジック」について、日銀内では「思ったよりも踏み込んだ」(幹部)との感想が漏れる。別の幹部は「複数国の連合体であるECBは意思決定に時間がかかる。先に緩和を宣言しておくことで調整の時間を確保する必要があったのだろう」と分析する。

一方で「12月までに経済情勢が変わった場合、ドラギ総裁はどうするのか」との懸念も聞かれる。日米欧の物価は原油に代表される商品市況の悪化が押し下げている。もし商品市況が反転し、物価が上がる兆しが出てきた場合にはどう対処するのか。そんな疑念が浮上している。

もう一つの日銀との政策の違いはマイナス金利だ。ドラギ総裁はマイナス0.2%の中銀預金金利について「引き下げを議論した」と発言し、一段と金利を押し下げる可能性を示唆している。

日銀は現在、中銀預金金利にあたる付利を0.1%に設定している。黒田東彦総裁は7日の記者会見で付利の引き下げについて「検討もしていないし、近い将来に考えが変わる可能性もない」とあっさり否定した。

付利の引き下げは「政策の抜本転換」(幹部)。現在の量的・質的金融緩和が効果を発揮していると説明する以上、追加緩和の手段としての付利の引き下げは選択しづらい。

ある日銀幹部は「そもそも欧州と日本ではマイナス金利を受け入れる土壌が違う」と解説する。欧州ではギリシャ危機以降、ドイツ国債を中心にマイナス金利が頻発している。主要国で初めて政策金利をマイナスにしたのはスウェーデンの中央銀行だ。こうした背景があって政策金利をマイナス水準に引き下げた。

「日銀はECBほど追い詰められていない」。日銀内ではこんな声も出るが、政策目標である消費者物価指数(CPI)が8月に前年同月比マイナスに転じたのも事実。日欧とも難しいかじ取りを迫られる点は変わらない。

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米FOMC、12月利上げの可能性残す

[28日 ロイター]
米連邦準備理事会(FRB)は28日まで開催した米連邦公開市場委員会(FOMC)後の声明で、事実上のゼロ金利を据え置いた。だが世界経済による逆風については重視する立場を示さず、12月の利上げの可能性を残した。

市場関係者のコメントは以下の通り。

●予想通り、一段とタカ派的

<ヘリテージ・キャピタル(コネティカット州)のポール・シャッツ社長兼最高投資責任者(CIO)>

FOMC声明は予想通りの内容だった。FRBが利上げに踏み切らないことは織り込み済みだったが、FRBは中国アジアに重点を置いた前回のハト派的な声明から脱却し、12月利上げへの道筋をつける必要があった。今回の声明は前回よりも一段とタカ派的とみられる。

●市場の利上げ警戒感が据え置きの理由、12月を注視

<マーク・ハードカレンシー(米カリフォルニア州)の社長兼ポートフォリオマネジャー、氏アクセル・マーク氏>

予想通りだった。9月のFOMCでは市場の状況を理由に利上げに踏み切らなかった。現在は市場は落ち着いているが、FRBは今回も利上げには動かなかった。

FRBが利上げに踏み切らないのは、中国などの状況が理由ではなく、FRBの利上げに対する警戒感が市場に出ていることが理由だ。つまり、自分で自分の尻尾を追いかけているような状態にある。このため、ある方向に向けて一歩踏み出すと、結局一歩後退せざるを得なくなっている。

12月も同様のことを繰り返してうまく行くのか、見守りたい。

●12月利上げに含み、明確なシグナルなし

<ソシエテ・ジェネラル(ニューヨーク)の首席米国エコノミスト、アネタ・マルコフスカ氏>

(利上げ)方向に市場を促しつつも、金融状況の全般的な引き締めにつながらないよう配慮しており、非常に賢明なやり方とおもわれる。とりわけ(12月)会合に言及することでさらりと市場の反応をうかがいつつ、市場を驚かせてはいない。利上げの可能性に含みをもたせながら、可能性があることだけを示し、必ずしも12月利上げのシグナルを明確に表しているわけではない。

●FRB、利上げで米経済の健全性示すべき

<ITGのリサーチ・セールス・取引主任、マイケル・マラレ氏>

FOMCを受け、株式市場の即座の反応は下落だった。しかし、FRBが米経済に対する自信を強めると同時に海外情勢に対する懸念を弱め、米経済の長期的な健全性を明示するために利上げに前向きになっていることは望ましい構図と考える。

米経済は(健全性に関し)FRBから承認を取り付けることを必要としており、それは利上げという形で示されることになる。経済の健全性が最も重要なことであることは明確であろう。たとえ利上げが25ベーシスポイント(bp)の連続的な動きとなっても、市場は切り抜けることが可能であり、株式は引き続き予見可能な将来において、選好されることになるだろう。



ドル全面高、FOMCは12月に利上げ判断へ

[ニューヨーク 28日 ロイター]
28日のニューヨーク外為市場では、ドルがユーロなど主要通貨に対して全面高となった。米連邦準備理事会(FRB)は27─28日に開催された米連邦公開市場委員会(FOMC)後の声明で事実上のゼロ金利を予想通り据え置いたが、12月の会合で利上げ判断を行うと述べた。

声明は利上げについて雇用とインフレの進展度合いによるとし、12月の利上げが改めて意識されることとなった。また、世界経済が経済活動を抑制するという文言が削除された。

ユーロ/ドルは8月初め以来の1.08ドル台に下落後、終盤は1.2%安の1.0915ドルでの取引。ドル/円は121円台に上昇、終盤は0.6%高の121.16円となっている。

ドル/スイスフランも3月半ば以来の0.9959フランを付け、終盤は0.9%高の0.9949フラン。またポンド/ドルは約2週間ぶり安値水準で取引されている。

ドイツ銀行(ニューヨーク)でFX戦略部門のグローバル責任者を務めるアラン・ラスキン氏は、FOMCの結果について「ドルにとっては非常に大きな支援材料だ」としたうえで、「FRBの政策は中国やユーロ圏での緩和策などとは一線を画すだろう」と述べた。

一方、FRBが12月に利上げに踏み切れるかについては懐疑的な見方もある。バークレイズは調査ノートで、FRBのトーンはタカ派的だが、弱いインフレや新興市場で続く混乱により、利上げは来年3月まで後ずれするかもしれないとの見方を示した。

メルク・インベストメンツの社長兼主席投資オフィサー、アクセル・メルク氏は「結局のところ、FRBが利上げできなかった理由は利上げで巻き起こされる市場の懸念であって、中国(の景気減速)などが理由ではない」と指摘する。

同氏は「FRBは無駄な努力をしている。一つの決断をすると、また後戻りする。12月に利上げを試みるだろうが、それが今回うまく行くか見ものだ」と語った。

FOMC声明発表後、CMEフェッドウォッチによると米金利先物市場が織り込んでいる12月利上げの確率は43%、声明前の34%から上昇した。また、来年1月の確率は50%以上となっている。

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「黒田総裁は天の邪鬼」、30日は追加緩和ない可能性も-高橋洋一氏

(ブルームバーグ):
第一次安倍内閣で内閣参事官を務めた高橋洋一・嘉悦大学教授は、日本銀行が30日開く金融政策決定会合について、経済情勢をみれば追加緩和を行うべきだが、黒田東彦総裁は「天の邪鬼(あまのじゃく)な人なので予測するのは難しい」と述べ、見送る可能性もあるとの見方を示した。

高橋氏は20日のインタビューで、「7-9月はマイナス成長になる確率の方が高い」と指摘。「黒田総裁は予想インフレ率は大丈夫だと言ってきたが、それも怪しくなってきた。ブレーク・イーブン・インフレ率(BEI)や各種アンケートでみると、あまり上がっていない。黒田総裁が言っていることが全部外れている。政策としては動かないといけない段階に入った」という。

しかし、「黒田総裁は『皆がやれ、やれ』と言うとやらない。天の邪鬼な人なので予測するのは難しい。やらない可能性が実は出てくる。どちらに転ぶかよく分からない状況だ」と述べ、「べき論ではやるべきだが、黒田総裁の性格はそうではない。政府はぎりぎり1月には補正予算を打つと思うので、それに合わせて追加緩和を行うという可能性はある」と語った。

高橋氏は財務省出身。かねてマネタリーベースの増加が予想インフレ率を押し上げると主張しており、日銀の岩田規久男副総裁や原田泰審議委員と考え方が近い。第一次安倍内閣で内閣参事官を務め、本田悦朗内閣官房参与ら安倍首相のアドバイザーとも関係が深い。2014年4月に実施された消費増税の5%から8%への引き上げについて、早くから景気への悪影響を考慮し中止すべきだと主張していた。

17年4月の消費増税実施なら黒田総裁はお手上げ

高橋氏は、14年4月の消費増税の影響は軽微だと発言していた黒田総裁は予測を間違ったと述べ、「消費増税をしなかったら物価は既に2%に達していたのではないか」とみる。消費増税が実施されるのであれば、「中央銀行としてはその影響をもう少しきちんと予測しないといけなかった」と述べ、「このまま何もしなかったら16年度前半の2%達成も無理だろう」という。

17年4月の消費税の10%への引き上げについても、「強行すれば再びマイナス成長に陥るだろう。こういう景気の状態で消費増税を行えば、景気が悪くなり、景気後退が続くことになる」と指摘。増税で景気悪化を招けば選挙に勝つ確率は低下すると述べ、「参院選にも負け、衆参ねじれになれば政権はレームダック化する。そうなると終わりだ。そういう話は安倍首相に会った際に伝えている」という。

消費増税が実施されれば、いくらマネタリーベースを増やしても物価目標2%を18年4月までの黒田総裁の任期中に実現するのは無理だと述べた。消費増税の影響を短期間で補うだけの力は金融政策にはなく、「増税が実施されれば黒田総裁はお手上げだろう」と語った。

消費増税について黒田総裁は当事者の発想に

高橋氏は、安倍首相は消費増税について選挙を迎える段階で判断するとみている。「景気が悪くなり成長率がマイナスになるということが分かれば、合理的に考えればやめるだろう。法律に縛られているので、予定通りやるべきだという意見が多いが、そういう主張を吹き飛ばせるのは選挙しかない」という。

一方で、このタイミングで追加緩和を行い消費増税を実施しなければ、黒田総裁は任期中に2%の達成が可能だとの見方を示し、「私が黒田総裁の立場であれば、消費増税は実施されないという合理的な予測の下に、このタイミングで追加緩和を行う方が、実は政策目標達成のためにはプラスになると合理的に予測するだろう」と語る。

もっとも、「黒田総裁は消費税の話になると、客観的に予測するというよりは、自分が当事者になって上げるべきだと思ってしまうので、多分消費税をめぐる状況についてそのように客観的に予測しづらいのではないか。そうすると、金融政策のタイミングも間違ってしまうのではないか」とみる。
どれだけ量を増やせば物価上がるか「やりながらでないと分からない」

高橋氏は追加緩和の具体的な手段としては、「マネタリーベースの量が予想インフレ率に影響を及ぼすので、マネタリーベース目標を増やせばよい。10兆~20兆円増やせばよい。買うものは何でも良いが、最後は出口を考えないといけないので、一番大きな市場である国債が無難だ」と指摘。

その上で、「マネタリーベースを増やすと、少なくとも過去のデータから見ると半年くらいのラグで予想インフレ率が上がる。予想インフレ率が上がると実質金利は下がるので、その分だけ設備投資の有効需要が増えて消費も増える。為替が円安になることで需要創出効果も出る。それで需給ギャップが縮まり、結果的に物価が上がっていくというプロセスだ」と言う。

マネタリーベースと物価の関係について高橋氏は「やりながらでないと分からないところがちょっとある。アクセルを踏んだ時、どのくらいエネルギーとリンクするのかは非常に難しい。ただしアクセルを踏めば、ある程度エネルギーが上がっていくことは間違いない。どのくらいのスピードになるかは、スピードを見ながらアクセルを調整するとしか言いようがない」と説明している。

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コラム:日銀追加緩和シナリオの落とし穴

嶋津洋樹SMBC日興証券 シニア債券エコノミスト

東京 19日]
日銀が今月末に追加緩和に踏み切るとの観測がくすぶっている。政府が10月の月例経済報告で景気の基調判断を下方修正したことは、日銀への圧力にも見える。

確かに、次の参議院選挙まで残された期間が1年を切るなか、政府に景気刺激策を求める声が強まっても不思議ではない。景気対策に追加緩和が重なれば、金融市場へのインパクトが大きくなり、精彩を欠く株価や支持率にも追い風となる可能性はあるだろう。

もっとも、そうした期待はいずれも実現しないか、中途半端に終わるのがせいぜいだと筆者は考えている。というのも、国内景気は停滞気味とはいえ、大きな需給ギャップを前にデフレとの戦いを強いられた2013年頃とは異なっているからだ。

一部には、環太平洋連携協定(TPP)の大筋合意を受けて、政府や日銀がここぞとばかりに拡張的な財政・金融政策に動くとの見方もあるようだが、むしろその逆で、自制がきく時期ではないか。

そもそもTPPは「大筋合意」に達しただけで、各国国内での承認手続きなしでは発効には至らない。米国で早速、次期大統領の有力候補とされるヒラリー・クリントン前国務長官が不支持を表明したことに象徴される通り、その道のりは長く険しいことが予想される。こうしたなかで、日本だけがTPPを理由に派手な景気対策や金融緩和策を打ち出すことは難しいだろう。

そのことは、アベノミクス「第2ステージ」が「第1ステージ」と異なり、供給側の改革に焦点をあてていることからも明らかだ。実際、安倍首相は9月24日の自民党両院議員総会後の記者会見で「少子高齢化に歯止めをかけ、50年後も人口1億人を維持する」ことを主張。その実現のために、「希望を生み出す強い経済」「夢をつむぐ子育て支援」「安心につながる社会保障」を新たな「3本の矢」とすることも示した。

そして、新たな「第1の矢」では「生産性改革」や「多様な働き方改革」に言及。「第2の矢」は「希望出生率1.8の実現」、「第3の矢」は「介護離職ゼロ」をそれぞれ具体的に掲げた。

新たな「3本の矢」を筆者なりに整理すると、人口減少という現実を前に短期的には生産性の向上や労働参加率の引き上げなどの「第1の矢」で対応。「第2の矢」は長期的な課題なだけに的までが遠く、射るまでに時間がかかる。それを計算に入れ、急いで取り組むという意味で「第2の矢」としたのだろう。

一方、「第3の矢」は的まではそれほど遠くない。しかし、社会保障制度の見直しなど、大きな力が必要な問題。新たな「3本の矢」も「第1ステージ」と同様、射る順番が綿密に計算されている。

いずれにしても、アベノミクス「第2ステージ」は、主に需要不足への対応が目的だった「第1ステージ」とは明らかに異なっている。需給ギャップが縮小し、人手不足などの供給側のボトルネックが目立ち始めたことを踏まえれば、主に需要を刺激する財政政策や金融政策の拡大余地は「第1ステージ」のスタート当初に比べ、限られるだろう。

安倍首相の「もはやデフレではないという状態まで来た」(9月24日会見)との発言や、黒田日銀総裁の「いわゆるデフレ状況ではなくなったと思う」(10月7日会見)との言葉には、そうした意味が込められていたと筆者は考えている。

<緩和の解除模索も大規模な追加緩和も考えにくい状況>

また、日銀にとっては、企業の価格設定行動が「量的・質的金融緩和」の導入当初と比べて「かなり様変わり」(黒田総裁・10月7日会見)したことも、追加緩和までの距離を遠くしている可能性がある。

というのも、予想物価上昇率が上昇し、デフレマインドが緩和してくると、企業はエネルギーなどのコスト増加に対し、人件費などの削減で生産性を向上させるよりも、そのまま販売価格へ上乗せする傾向を強めると考えられるからだ。

実際、法人企業統計調査で過去最高を更新した経常利益率を見ると、変動費の改善が最も寄与している。こうした収益構造は、デフレ下で企業が原材料などのコストの下落を価格競争の原資にしていた時代には見られなかった。

黒田総裁は今年4月に米国で行った講演で、「量的・質的金融緩和」の波及経路として、まず、強いコミットメントが2%の目標に対する人々の事前の信念を高め、その後、実際の物価上昇率の上昇が観察されるにつれ、次第に予想物価上昇率も更新されていったということが言えると説明している。このことは、物価がいったん上昇し始めると、予想物価上昇率も上昇し始めることを意味する。

しかし、2014年は消費増税に伴う個人消費の停滞や原油安の進行で物価も下落。それに伴って予想物価上昇率も低下することが警戒された。日本では春闘が本格化する前に予想物価上昇率が低下してしまうと、賃金も上がらず、デフレに逆戻りするリスクがあった。

今年は2014年とは対照的に予想物価上昇率が上昇。企業の価格設定行動はそれを反映していると考えられる。このまま春闘を迎えれば、企業はベースアップを含む賃上げに踏み切らざるを得ないだろう。しかし、その前に追加緩和に踏み切ると、上述した通り、物価のみが先に上昇し、ようやく持ち直しの兆しが見え始めた個人消費を腰折れさせるリスクが高い。

日銀が最新(9月14―15日開催、10月13日公表)の金融政策決定会合議事要旨で「賃金の上昇を伴いつつ、緩やかに物価上昇率が高まっていくことが重要であるとの認識を共有した」のは当然である。

ちなみに、日銀は今からちょうど10年前の2005年10月、福井総裁時代の展望レポートで、2005年度と2006年度の消費者物価指数(除く生鮮食品、コアCPI)を4月時点の前年比マイナス0.1%、同プラス0.3%から、それぞれ同プラス0.1%、同プラス0.5%へと上方修正し、「現在の金融政策の枠組みを変更する可能性は、2006年度にかけて高まっていくとみられる」と、量的緩和を解除する姿勢を鮮明にした。

当時のCPI(2000年基準)は8月、9月ともにコアで前年比マイナス0.1%。偶然にも2015年8月のコアCPI(2010年基準)も前年比マイナス0.1%である。ただし、食料・エネルギーを除くコアコアCPIは2005年8月が前年比マイナス0.5%だったのに対し、2015年8月は同プラス0.8%だ。

黒田総裁が10月7日の会見で「2%の物価安定の目標の達成およびそれを持続的に安定的に維持するという目標からみると、まだ道半ばだと思う」と言っている以上、今の日銀がいきなり「量的・質的金融緩和」の解除を模索する可能性はかなり低い。それどころか、必要な時点まで「量的・質的金融緩和」を継続するために、マネタリーベースの年間目標を維持したまま、内訳を柔軟化することはあり得るだろう。

しかし、日銀が次回の金融政策決定会合で2014年10月末のような規模で追加緩和へ踏み切るとは考えづらい。

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ドラギ・マジックと太郎の助け舟

日本経済新聞 編集委員 滝田洋一

魔法のつえの一振り。ドラギ欧州中央銀行(ECB)総裁の追加緩和予告が、金融・株式市場の雰囲気を一変させた。日本株も急騰し、日銀追加緩和の催促相場の様相を呈し始めた。その局面で麻生太郎財務相がいい味を出している。

デフレ回避のためなら、何でもあり。ドラギ総裁がそんな構えを打ち出した。欧州の国債利回りが急低下。ユーロ相場もドルや円に対し急落し、株式相場は欧州、米国、そして日本などアジア市場ではね上がった。

8月の中国による突然の人民元切り下げは、世界的な市場混乱を誘発した。それに対し、絵に描いたようなポジティブ・サプライズ(うれしい驚き)である。ドラギ・マジックの余韻が冷めやらぬうちにと、今度は中国が追加緩和で後を追った。

とはいえ、ECBによる想定外の政策転換は、米連邦準備理事会(FRB)と日銀に微妙な影を落とす。とくに悩ましいのは、年内利上げの旗を降ろしていないイエレンFRB議長だろう。

ドラギ発言は、追加緩和を出汁(だし)にしたユーロ安の誘導である。その結果、引き起こされるのはドル高であり、米企業の収益には逆風となることで、米利上げのハードルは高まる。

ドル高による景気下押し効果を重く見るブレイナード理事が、FRB内で声を強めるだろう。昨年6月に財務次官から横滑りしたブレイナード氏は、クリントン政権が誕生すれば財務長官の椅子を狙っているといわれる。

年内の上げが難しいとなると、イエレン議長は来年2月に予定される半期に一度の議会証言で景気・物価見通しを仕切り直し、3月利上げを目指すだろう。だが、そのころには米国は大統領選モードとなっている。よほど景気が良くなっていなければ、ハムレットであるFRB議長の対応は難しさを増す。

日銀については、10月30日の金融政策決定会合がひとつの山場。黒田バズーカ第3弾に向けた株式市場の催促相場が強まる。

ここへきて、異次元緩和については、内外から副作用を指摘する声が強まっているのは確かだ。国内では、食品など身の回り品の上昇が、かえって消費を抑えているという批判。年金生活者を中心に高齢者に強いこうした声は、来年の参院選を控え無視できない。

海外からの批判の典型は、米財務省の「為替問題議会報告」だろう。今回の為替報告は、円相場が「やや過小評価」として、「金融緩和への過度の依存は好ましくない」とクギを刺した。

とはいえ黒田東彦日銀総裁が、繰り返し約束している2%物価の達成を、放棄するとは考えられない。次回の政策決定会合で、景気と物価の見通しを下方修正するなら、追加緩和を視野に入れるのは自然である。

黒田日銀はさあどうする。市場の雰囲気がそうなっておかしくないところに、助け舟を出したのは麻生財務相だ。物価目標について、「日銀にできることには限りがある」「金融緩和だけで今すぐ達成できる状況ではない」と、得意の麻生節を繰り出したのである。

日銀の追加緩和の催促相場は、緩和が見送られた場合には、手のひら返しの急落となる。そんなリスクを抑えるために、未然に市場の期待に水を差したともいえる。

麻生氏としては、残り少ない緩和カードは、補正予算のタイミングと合わせて効果的に、と考えているフシもある。「押して駄目なら引いてみな」。そんな具合に市場と対話できる政治家が、日本にも登場したと、認識しておくべきだろう。

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「マジック」さく裂 「バズーカ」は撃ち方やめ?

日本経済新聞 経済部 湯田昌之

「ドラギ・マジックがさく裂したね」。昨晩から今朝にかけての円安進行の理由を聞くと、外国為替市場の関係者は口々にこう答えた。22日の欧州中央銀行(ECB)理事会後の記者会見で、ドラギ総裁は12月3日の次回理事会における追加金融緩和を強く示唆した。1ドル=119円台後半で推移していた円相場は会見後に120円台前半まで下落した。その後、国内外の株高をみて、じわじわと下げ幅が拡大。121円近辺まで下げ、9月25日以来、約1カ月ぶりの安値水準となっている。

ドラギ総裁は有言実行で知られる。会見では緩和について「いくつかの政策を話し合った」と発言。市場の大半が予想していた量的緩和の期間延長に加え、中銀預金金利のマイナス幅拡大も「今回の理事会で議論した」と述べた。ECBによる予想よりも幅広な金融緩和が待ち受けていると判断した投資家がリスク回避姿勢を弱め、円安が進んだ。

「ドラギ総裁の発言を受け、日銀が30日の金融政策決定会合で追加緩和に動く必要性が薄れた」(三菱UFJモルガン・スタンレー証券の植野大作チーフ為替ストラテジスト)との声が出ている。緩和が欧州経済を下支えし、中国ショックによって不安に傾いていた市場心理が改善。海外経済に対する悲観的な見方が後退するとみられている。

円相場が再び121円近辺に下がってきたため、企業の想定為替レートを意識して円安圧力をかける必要性も後退している。9月の全国企業短期経済観測調査(日銀短観)では大企業製造業の2015年度の想定は117円39銭と、現在の水準から離れている。また「これ以上の大幅な円安進行に対する政府の拒否反応は強く、日銀は動きにくい」(SMBC日興証券の森田長太郎チーフ金利ストラテジスト)との指摘もある。

ただ、日銀は同じく30日に公表する経済・物価情勢の展望(展望リポート)で消費者物価と実質経済成長率の見通しを引き下げる方針。「物価の見通しを下方修正しながら追加緩和を見送ることは、2%の物価上昇目標を掲げる日銀の信用を傷つける」(みずほ証券の上野泰也チーフマーケットエコノミスト)とし、依然として「黒田バズーカ」の再来を見込む声も根強い。

1カ月半先の緩和見通しを見事にコントロールしてみせたECBとは対照的に、1週間先に控える日銀の金融政策への見方は依然として割れている。市場による警戒は会合当日まで続きそうだ。

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ユーロ全面安、ECBが12月追加緩和示唆

[ニューヨーク 22日 ロイター]
22日のニューヨーク外為市場では、ユーロが大幅に下落した。欧州中銀(ECB)のドラギ総裁は22日の理事会後の記者会見で、ECBのマイナス預金金利を含む新たな金融緩和策を早ければ12月の理事会で発表する可能性があると表明したことで、ユーロはドルをはじめ主要通貨に対して全面安の展開となった。

ユーロ/ドルは約4週間ぶり安値の1.1108ドルまで売られた。9カ月で最大の1日の下落率で、終盤は2%安の1.1111ドルとなっている。

ユーロ/円も10月2日以来の安値となる134.07円に下落後、終盤は1.4%安の134.09円。1日の下げ幅としては3月以来の大きさだった。

またユーロ/ポンドは、5月以来の大きさとなる1日の下落率を記録して1.9%安の水準まで売られた。

今回の理事会でECBは政策金利を据え置いた。中銀は1年以上前に預金金利をマイナスに下げ、金利は「下限」に達したとたびたび表明してきた。これについては今でも議論が続いている。

市場参加者は、ユーロ圏のインフレに対処するため中銀預金金利引き下げを含む追加緩和政策を示唆したドラギ総裁の発言は、ECBが将来に向けて手持ちの政策手段は何なのかを示すサインだと受け止め、間髪入れずにユーロを売り込んだ。

ミレニアム・グローバル(ロンドン)のポートフォリオ投資部門で共同責任者を務めるリチャード・ベンソン氏は「ドラギ総裁は12月の理事会での緩和を前もって表明したと思う。マイナス金利は明らかに、再び議論の場に持ち込まれた」との認識を示した。

ダンスケ銀行やドイツ銀行のように、12月に10ベーシスポイントの預金金利引き下げを織り込み始めた銀行もある。

ドイツ銀行はノートで「市場は12月までの10ベーシスポイントの利下げを完全に織り込んだ。ECBがそこで追加緩和をやめると考える理由は何もない」としたうえで、「我々の分析では、マイナス圏の金利達成の前にはまだ長い道のりがある」との見方を示した。

ドラギ総裁発言後ドルは(ユーロ売りで)買われ、ドル/円は0.6%高の120.67円。ドル/スイスフランは1.5%高の0.9713フランに上昇した。米株も高く、ダウ工業株30種とS&P総合500種は9週間ぶり高値水準に上昇した。

ロイターの調査で、ECBが量的緩和策を2016年9月の期限以降も継続すると予想する確率の中央値は70%となっている。

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コラム:日銀追加緩和は本当に円安の起爆剤か

内田稔三菱東京UFJ銀行 チーフアナリスト

[東京 15日]
9月の米雇用統計が予想を大きく下回った。ただ、米国の利上げ先送りとの見方からリスク回避の円買い需要が和らいだうえ、日銀による追加緩和期待もドル円を下支えしているとみられる。

生鮮食品を除く消費者物価が2013年4月以来初めて前年比でマイナスに転じたことに加えて、4―6月期の国内総生産(GDP)がマイナス成長に落ち込むなど、最近の経済状況は日銀が10月末に追加緩和を講じた昨年と重なる。

日銀が重視する予想インフレ率も、市場の期待インフレ率(ブレーク・イーブン・インフレ率)でみると低下傾向をたどっており、9月短観で示された企業の物価見通しもじわりと低下している。さらに、政府も10月の月例経済報告で現状判断を1年ぶりに引き下げた。

一方、日銀は10月7日の金融政策決定会合で、「緩やかな回復を続けている」との従来からの景気判断を維持。黒田日銀総裁も企業、家計部門ともに所得から支出への前向きの循環メカニズムが続いていると説明した。予想インフレ率についても、やや長い目でみれば上昇しているとし、物価の基調も着実に高まっていくと、これまでと同様に強気の見方を示すなど、追加緩和の手掛かりを一切与えなかった。

しかし、国会答弁で強気の見方を示しておきながら、その3日後に追加緩和を決めた昨年の教訓を踏まえ、市場はこうした日銀や黒田総裁の説明を額面通りに受け取っていないようだ。多くの市場参加者が、日銀の掲げている2016年度前半頃の物価安定目標達成を懐疑的にみていることもあり、次回決定会合が開かれる10月30日まで追加緩和観測がくすぶり続けるだろう。

確かに、2016年度前半頃の物価安定目標達成が難しいと判断した場合、日銀が取るべき選択肢は、目標2%の引き下げ、達成時期の延期、追加緩和のいずれかとなるはずだ。このうち、強いコミットメントを通じて物価上昇に対する各経済主体の期待形成に働きかける日銀が、2%の目標を引き下げることはないはずだ。つまり、残る選択肢は、達成時期の延期か追加緩和の二者選択となる。

その点、黒田総裁は8月の会見時点で、原油価格の動向によって物価安定目標の達成時期が多少前後する可能性にすでに言及している。加えて、前述の通り、今月7日会合でも景気判断を維持するとともに、黒田総裁は同日の会見で、物価の基調は着実に高まってきていると述べている。総合的にみれば、10月の追加緩和は見送りとなる可能性が高いと考える。

<黒田総裁発言に変化、意図的なサプライズは考えにくい>

むろん、これまでサプライズを演出してきたのが黒田総裁流とするならば、一連の強気発言はサプライズ緩和への序章に過ぎないとの見方もできるのかもしれない。しかし、今年の黒田総裁による国会答弁や発言を振り返ると、意図的にサプライズを狙うとは考えにくい。

例えば、今年2月の参議院財政金融委員会での共産党・大門実紀史議員とのやりとりだ。同議員は、黒田総裁が昨年、2%の目標達成の実現に向けた道筋を順調にたどっていると国会で答弁したそのわずか3日後に日銀が緩和策を拡大した理由を質した。これに対し、黒田総裁は、サプライズを狙ったことを明確に否定。政策決定は合議制であるため、議論を先取りし、政策変更を示唆するかの答弁は不適切としつつも、議員の指摘に対し、主旨はよく理解したと計3回答弁している。

また、昨年は原油価格下落が始まった夏場以降、円安は総じて日本経済にプラスと公言してはばからなかった黒田総裁だが、今年5月に参院で、過度な円高水準は修正されたとも発言。6月10日には民主党・前原誠司衆議院議員の質問に答えた形とはいえ、「これまで円安がプラスだったので、どんどん円安になったらもっとプラスになるということでもない」などと発言し、ドル円急落を招いたことは記憶に新しい。

このほかにも、黒田総裁は多くの場で、為替相場はファンダメンタルズに沿って安定的に推移するのが望ましいとの発言を繰り返している。9月には、大阪での講演後、多くの企業経営者らを前にして、為替相場の安定確保に努めていくとの意向を示している。常識的に判断すると、明確な地ならしもないまま、日銀が10月30日に追加緩和を講じるとはやはり考えにくい。

<サプライズなき追加緩和なら、材料出尽くしでドル円反落も>

それでも、今年2月の黒田総裁の答弁を引用するのであれば、金融政策の決定は政策委員会の合議制に基づくため、10月30日会合での多数決の結果、地ならしもないまま追加緩和策が講じられる可能性を否定することはできない。

しかし、その場合も、追加緩和が円安への起爆剤となるのか疑問が残る。なぜなら、マネタリーベースの供給による円安効果は、実際のところ限定的とみられるからだ。

例えば、今年に入って、多くの通貨に対して円高が進んでいる通り、マネタリーベースの拡大が無条件で円安をもたらすわけではない。量的緩和策が通貨安へ波及するのは、名目金利の低下や予想インフレ率の上昇によって予想実質金利が低下する場合や、通貨安期待に直接働きかける場合だろう。

その点、2013年4月の量的・質的金融緩和(QQE)の導入時は、タイミングこそ予想されていたものの、その規模が事前のあらゆる予想を上回るサプライズとなったため、円安期待が強く刺激されたとみられる。そして、昨年のQQE拡大の際は、規模ではなく、予想外のタイミングが大きなサプライズとなって、やはり円安の起爆剤として機能したと考えられる。

一方、足もとでは、少なからず市場参加者が追加緩和に身構えているため、仮に10月30日に追加緩和があった場合も、そのサプライズの程度は昨年には及ばないだろう。また、すでに月間8―12兆円もの長期国債の買い入れを行っている日銀にとって、国債の買い増し余力は昨年と比べ大きく衰えているはずだ。追加緩和を講じる場合も、国債の買い増し額は昨年を下回る可能性が高い。

このように、規模とタイミングのいずれにおいても、サプライズの演出がなければ、ドル円は追加緩和の発表後こそしばらく上昇しようが、その持続性はかなり限定的なものになる公算が大きい。むしろ、その後は材料出尽くしとの見方から、ドル円が反落する可能性にすら警戒が必要だ。

こうして考えると、ドル円の下値不安が高まるのは、10月末の追加緩和が見送られた場合よりも、追加緩和策が講じられたにもかかわらず、それほど円安にならないといった値動きを、市場が目の当たりにしてしまった後だろう。米国の量的緩和策の場合も、第1弾や第2弾の前後でドル円は下落したが、第3弾前後でのドル安円高が限定的だった点に留意が必要だ。

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日銀・次の追加緩和のタイミングはココだ!~「予想インフレ率の低下」と「設備投資の減速」に注目せよ

http://gendai.ismedia.jp/articles/-/45822

8月鉱工業生産指数や9月短観など、このところ、景気低迷を示唆する経済指標の発表が相次いでいる。また、8月消費者物価指数は、生鮮食品を除く総合(コア)で前年比-0.1%と、2013年4月以来のマイナスとなった。このため、市場では、日銀による追加金融緩和の期待が高まっている。

だが、10月6、7日に開催された日銀の金融政策決定会合では、追加緩和は見送られた。日銀は、中国に代表される海外景気の減速懸念には十分留意しながらも、「デフレ解消は今なお進捗中である」という基本スタンスを変えなかった。

なかでも注目すべきは、日銀が「予想インフレ率の基調は安定している」と判断している点である。

現在の日銀は、「2%のインフレ目標」を掲げている。これはできるだけ早くインフレ率を2%近傍の水準にまで引き上げるだけではなく、将来にわたって「安定的に」2%近傍のインフレ率を実現させることも含んでいる。すなわち、これは、日銀が、足元の実現インフレ率だけではなく、「予想インフレ率」をも同様に重視していることを意味している。

だが、政策決定にとって意味のある予想インフレ率を手に入れるのは、さすがの日銀でも難しい。日銀は昨年の3月以降、短観調査対象企業全社に対し、1年後、3年後、5年後の販売価格、及び物価全般の見通し(対前年比)についてアンケート調査を実施し、企業ベースの予想インフレ率を直接把握しようと努めている。

これによると、9月時点での全規模全産業での自社の販売価格の平均予想上昇率は、1年後が+0.7%、3年後が1.4%、5年後が+1.8%で6月時点から0.2~0.3%程度下方修正されている。

日銀にとって、年率で0.2~0.3%程度の下方修正は、「企業がインフレ見通しを下方修正させた」と判断するほどの低下幅ではなかったかもしれない。だが、このアンケート調査は、あくまでも調査対象企業の「主観」に基づいたものであり、各企業の経営者が販売価格や物価全般の見通しを毎四半期毎に定量的に推定しているとも思えない。

また、定性的な見通しの場合、これまでの動きからのマイナーチェンジで終わってしまう可能性も否定できない。そのため、各企業の回答結果を単純平均(もしくは中心値をとっても同様である)しても、その数値の統計的客観性にはやや疑問が残る。

この調査は、昨年3月から開始されたものなので、わずか7四半期分のデータがあるのみである。日本企業に再びデフレマインドが出てきたか否かは、少なくともデフレ期の予想インフレ率の動きをみなければ、単純な平均値の計算だけでは把握が難しい。

一方、企業の物価に対する将来見通しという意味で、日銀は、日銀短観の「販売価格判断DI」という形で、1974年6月以降、長期の時系列データが入手可能である(全規模全産業ベース)。そこで、ここでは、この「販売価格判断DI」の回答の構成比データを用いて、全規模全産業ベースで企業の予想インフレ率を推定することを試みる。

ちなみに、「販売価格判断DI」は、企業が1四半期後に自社の製品・サービスの販売価格を引き上げる予定であるか否かを問うたものであり、回答は「引き上げる」、「変えない」、「引き下げる」の三択となっている(なお、「販売価格判断DIは、「引き上げる」の構成比から「引き下げる」の構成比を差し引いたもので、そのプラス幅が大きいほど、企業の予想インフレ率が高いことを意味する」)。

この構成比データは、「定性データ」だが、これを「定量データ」に換算する統計学的手法を用いて、1四半期後の企業の予想インフレ率を推定する。この手法は「カールソン・パーキン法」と呼ばれる。

筆者は約15年前から日銀短観等の企業の景況観調査の結果を用いて、「カールソン・パーキン法」で予想インフレ率を推定しているが、「カールソン・パーキン法」は、企業の将来物価(販売価格)の予想がどのような分布になっているかも考慮に入れている点で、単純平均では得られない情報価値がある。

実際の推定結果だが、2015年9月時点での翌期(2015年12月時点)の国内企業物価指数を前期比年率換算で-1.7%になると予想している、という結果となった。

この推定データによると、企業の予想インフレ率は、2013年4-6月期から大きく上昇し一旦は前期比年率でプラスに転じたものの、消費税率引き上げ後の昨年7-9月期以降、上昇は止まり、緩やかな低下基調に転じていた。

ただ、ゼロ%近傍で推移しており、「デフレ懸念が再び台頭してきた」というほどの低下ではなかった。だが、今回、一四半期の下落幅としては比較的大きく、QQE後のデフレ解消のトレンドが変わった可能性がある。

実際の回答結果の内訳をみると、「将来、販売価格を引き下げる」と回答した企業の割合はわずかに上昇した程度で、多くの企業が再びデフレ下での厳しい価格引き下げ競争に入りつつある状況ではない。

それでも、販売価格を引き上げることによってマージンを積極的に取りに行こうとする企業の割合が大きく低下した。これは、「値段は少々張るが、高い値段なりの良質な商品、サービスを提供しますよ」という企業の割合が大きく低下したことを意味する。しかも、このような企業の価格戦略の変化は設備投資に影響を及ぼしていくと考える。

すなわち、この予想インフレ率の低下は、「実質金利」の上昇をもたらしている。この短観ベースでの予想インフレ率を用いて算出した「実質金利」は設備投資関連指標とかなり高い逆相関関係にあり、しかも設備投資に先行している点を強調したい。

予想インフレ率の低下による「実質金利」の上昇は、近い将来の設備投資減速につながりかねないが、これは、設備投資の先行指標といわれる機械受注の最近の減少と整合的である。いわゆるコア機械受注(「船舶・電力を除く民需」)は6月以降、3ヵ月連続で、前月比マイナスで推移している。

理論的には、物価は、①予想インフレ率の動向、②経済の需給ギャップの見通し(いわゆる景気判断)の2つの要因で決まる。

今回の短観の結果から推測すると、日本経済は、すでに予想インフレ率の低下が始まっているが(①の要因)、今後、設備投資の減速が波及してくれば、需給ギャップのマイナス幅が拡大する(②の要因)懸念が台頭するだろう。そして、これは、実際のインフレ率を低下させる要因となることが十分に想定される。

以上より、日銀は、設備投資の減速傾向が明確になってから追加緩和を実施する可能性が高いと考える。

タイミングとしては、早ければ、7-9月期のGDP速報値で設備投資の減速トレンドが明確になって以降ではなかろうか(ちなみにGDP1次速報の発表は11月16日、2次速報の発表は12月8日、金融政策決定会合は、11月18、19日、および12月17、18日である)。

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コラム:サプライズなき追加緩和、次回決定か

熊野英生第一生命経済研究所 首席エコノミスト

東京 8日]
10月に2回ある日銀金融政策決定会合のうち、前半7日は追加緩和を見送った。注目されるのは、次の30日会合である。その日は展望レポートの発表もあり、経済・物価見通しを双方引き下げることはほぼ確実だ。

2016年度前半に2%の物価上昇を達成できそうにないと日銀が判断したときは、黒田総裁は公言した通りに「躊躇(ちゅうちょ)なく調整を行う」ことになる。

筆者が30日に追加緩和がありそうだとみている理由は、そのタイミングで追加緩和をすると、物価の押し上げに大きな効果を働かせることができると考えるからだ。30日には、前回の追加緩和から1年が経つ。つまり、円安効果を一巡させずに、2015年度後半以降にも働かせようとすると、このタイミングでの追加緩和が有効になる。

展望レポートの見通しの下方修正を受けて、追加緩和で物価上昇の期待形成を後押しする必要が増してきたので、日銀は緩和に打って出ると考えると筋が通る。消費者物価は、目下はエネルギー要因のマイナス圧力が強く表れているが、今年11月以降にその圧力が剥落していくので、ここで輸入物価が上昇すると、来年1月以降の消費者物価の上昇率は0%台後半を超えたプラスになっていくことが予想される。

もしも何も行動をしなければ、2016年度前半にかけて劣勢の状況を説明することが一段と苦しくなる。追加緩和の絶好のチャンスを見送ったこと自体が、日銀が醸成する追加緩和効果を弱める方向に作用することも考えられる。

<市場に見透かされた日銀の台所事情>

金融市場では、もしかして9月15日の会合、もしくは10月7日の会合でサプライズ緩和があるかもしれないと、ささやかれてきた。なぜ、人々がサプライズ緩和を警戒したかというと、そこにあるのは「日銀はサプライズを起こさないと影響力のある追加緩和を演出できないだろう」という心理である。

つまり、日銀にはもう追加緩和の影響力を高める緩和余地が残されていないという台所事情が見透かされているのである。

黒田総裁は、インフレ予想を定着させていくと語っているが、追加緩和の影響力を高めるツールが底をついている。だから、ごく短期間で消滅してしまう奇襲攻撃のインパクトで円安を促進しようというのは矛盾にほかならない。

当初の黒田日銀は、円安で企業収益を底上げして、それが賃上げに結びつくことで消費者物価が上がるとシナリオを描いていた。しかし、賃上げは思ったほど物価上昇を誘発せず、円安を促す追加緩和を何度も行わなくてはいけなくなったのが、弾薬庫の武器がなくなった背景だ。円安だけで物価上昇を誘導するという短期決戦志向のせいで、現在のように深みにはまったわけである。

<政治の思惑で外堀が埋まるリスク>

7日の決定会合は、安倍内閣改造と重なった。新閣僚が決まると、補正予算を組んで、環太平洋連携協定(TPP)発効を念頭に置いた農業対策や、景気対策を行おうという流れになるだろう。すると、日銀にも景気対策の一翼を担ってもらわなくては困るという意見が出てくる可能性はある。

30日の決定会合は、そうした目に見えない圧力が働く中で、追加緩和を検討することになろう。

もっとも、追加緩和にはマイナス要因もある。これ以上の円安は、輸入物価の上昇を嫌う生活者から反発を受けることだ。元来、こうした反発は金融政策には関係ないことだが、政治的な思惑が強まると無視することはできなくなる。

6月10日に黒田総裁の発言が取り上げられて、1ドル=125円の為替レートが円高方向に跳ね返されたことは記憶に新しい。無言の圧力として「円安は1ドル=125円が限度」という「黒田ライン」が意識されたこともあった。

<最大のかく乱要因はFRBの年内利上げ>

30日に日銀が追加緩和を行うかもしれないと考えると、最大の障壁になりそうなのは、米連邦準備理事会(FRB)の利上げがかく乱要因になることだ。米指標は、雇用統計もISM製造業指数も徐々に勢いをなくしている。強い経済指標を前提にした年内利上げはできそうにない。

そうなると、米利上げによって株価が乱高下して、リスク回避の円高圧力が生じるリスクはある。日銀にとっては30日に追加緩和をしても、その影響力はFRBの利上げに伴う混乱によってかき消されてしまうことになりかねない。

しかし筆者は、FRBの年内利上げ実施は厳しいだろうとみているので、日銀は緩和するならば早い方がよいと判断するのではないかと考えている。

日銀は、追加緩和の影響力を2013年4月や14年10月のときのように高めることはできないだろうが、それでも追加緩和のメッセージ性に重きを置いて、緩和を決断するだろう。追加緩和の内容は、長期国債の買い増しなど特段サプライズに依存しないものになると考えられる。

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