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円高を促す魔物、米中外交の「朝海の悪夢」

日本経済新聞 編集委員 滝田洋一

円、人民元、韓国ウォン。朝鮮半島情勢が緊迫化するなか、アジア通貨のなかで円ばかりが上昇圧力を受けやすくなっている。北朝鮮の核をめぐる外交戦の裏側で、通貨同士のつばぜり合いは激しさを増している。

中国為替操作国に指定しない」。トランプ米大統領はその理由として、北朝鮮政策での中国の協力取り付けを挙げた。核と通貨を絡ませる手法は、いかにも「交渉人」を自任する大統領の真骨頂ともいえる。

半年ごとに米議会に報告する「為替政策報告」で、中国への為替操作国の指定がなかったので、市場も落ち着くはず。本来なら一件落着のところ、そうは問屋が卸してくれない。大統領がドル高を強くけん制しているからだ。

トランプ政権の意向を忖度(そんたく)した市場参加者が、ドル売りの相手通貨として人民元ではなく、円を選択しだしたのだ。かくてドル安圧力は人民元を素通りして、円高・ドル安の場面を迎えている。

米中が激しく対立しているようにみえて、ある朝目覚めたら日本の頭越しに握手している。そんな事態を冷戦下の1960年代に駐米大使を務めた朝海浩一郎氏は懸念した。

外交関係者のいう「朝海の悪夢」である。この悪夢は71年7月の電撃的なニクソン訪中発表で現実のものになった。対中強硬姿勢を売り物にしていたトランプ政権の下で、同じ事が繰り返されようとしているのだろうか。北朝鮮情勢とも絡み今回、東京市場の参加者が抱く懸念である。

円は韓国ウォンとの関係でも、上昇圧力を受けやすくなっている。アジア通貨のなかでは、北朝鮮と接する、韓国のウォンが売られている。それ自体は自然な動きとはいえ、反射的に円が買われるのだから難儀だ。

為替政策報告では、韓国ウォンは人民元や円とともに監視対象リストに挙がっている。何しろ韓国の経常黒字の国内総生産(GDP)比は2016年には7.0%。日本の3.7%の2倍近くにのぼる。このため、ウォン相場は上昇圧力を受けていたのだが、有事のウォン売りによって帳消しにされた。

韓国ウォンの対ドル相場をみると年初来3月末まで7.4%急騰した後、4月に入ってからは約3%下落した。韓国紙「中央日報」は「当面はドル安(ウォン高)に変わる要因は多くない」との見方を伝える。

こうした為替相場の動向を敏感に映しているのは、日本と中韓の株式相場だ。もともと外国投資家のウエートの小さい中国の上海総合指数は、3200台で比較的底堅い動きとなっている。

韓国総合指数も2100台と大きく値崩れしていない。典型的なのは副会長が逮捕されたサムスン電子で、何と最高値圏にある。日本と韓国はグローバルな市場で競合している製品が多い。時ならぬウォン安で、韓国の輸出企業が、追い風を受けている。

大きな外的ショックが日本に不利に働いたのは、2008年のリーマン・ショック後と似ている。当時も円はドル安圧力を一身に受けた。

中国は08年夏から人民元のドル連動を復活させることで、嵐をかわした。韓国のウォンはリーマン・ショック後、対円相場が半値になった。韓国の場合は国際金融市場の不安が沈静した後も、ウォン安を維持するための為替操作が実施されていた。

足元のテーマは金融不安ではなく、北朝鮮の核危機。とはいえ、為替相場への波及には油断がならない。18日にはペンス米副大統領が来日し、日米の経済対話が開かれる。対話の主役となる麻生太郎副総理は、20日には訪米しムニューシン米財務長官との会談に臨む。

2月の日米首脳会談の際に、為替は副首相と副大統領レベルの問題ということで、日米間の仕切りはできている、というのが日本側の理解。そうならば、とんでもない円高の加速はないはずだが、しばらくは円から目が離せない局面が続く。

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